2020年度第3回研究会

2020年12月13日(日)開催ワークショップ

日本語母語話者のための中国語教育文法を考える
 ――「何を」「どう」学ぶか――
 

11月16日(月)に、ワークショップの開催情報を会員あてにメール送信し、50名の参加が可能であることをお伝えしましたが、当日午後すでに50人に達してしまいました。その後、個別にメールでお問い合わせをいただいたこともあり、どのような対応が可能であるか検討しました結果、あと20人追加で参加を受けつけることにしました。人員体制の面で、これ以上の参加受付は不可能な状態ですので、どうぞご了承ください。

概要

 本研究課題では、商品やサービスの利用者をユーザーと呼ぶのと同様に、学習者(および教授者)を教育文法のユーザーととらえ、ユーザーが利用しやすいかたちで文法に関する情報を提供することをめざしている。本研究での中国語教育文法とは、日本語を母語とする中国語学習者を対象に、「初級・中級・上級という学習到達段階のどのレベルにおいてもコミュニケーション上の目的を達成しやすいように文法情報を整理(体系化)したもの」ととらえている。
 これまでメンバーは、学会や研究会で問題提起や解決案提起を重ねてきたが、その都度、参加者から貴重な意見やコメントを得てきた。本ワークショップでは、いままで示された疑問や質問に答えることも念頭におきながら、「『何を』『どう』学ぶか」について、文法項目の扱い方や学習方法を中心に討議する予定である。質疑応答などで参加者との相互交流を図りたいので、定員を50名とさせていただきたい。

参加申し込みは、こちらからお願いいたします。
https://www.kokuchpro.com/event/221e3ec9ea402a0e343086c02e200e79/
申し込みは2020年12月11日20:00で締め切らせていただきます。ご了承ください。

プログラム

12:50 開場
13:00 開始
13:10 全体の趣旨説明
13:10-13:30 鈴木慶夏(神奈川大学) ユーザー視点の中国語教育文法が提供すべき情報とは――学習者の“是……的“構文使用状況から――
13:35-13:55
张恒悦(大阪大学)
语法点引入时的话题与场景选择――以教材中差比句的处理为例
14:05-14:25 岩田一成(聖心女子大学) データから見る日本語比較表現の実態
14:30-14:50 西香織(明治学院大学) データから見る中国語比較表現の実態
14:55-15:15 清原文代(大阪府立大学) 「比べて選ぶ」ための教案――“货比三家”ネットショッピングサイトを利用して学ぶ――
15:25-15:45 中田聡美(大阪大学) 中国語初級教科書における語気助詞の扱いを再考する――語気助詞“吧”を例に――
15:50-16:10 古川裕(大阪大学) 多機能語の感性的教授法について――“把”のコアイメージを例として――
16:10-16:30 全体討議

発表概要
 

鈴木慶夏(神奈川大学)
「ユーザー視点の中国語教育文法が提供すべき情報とは――学習者の“是……的”構文使用状況から――」

“是……的”構文は、各種教材での説明方法や練習問題において、ユーザーが実際に使うための情報を提供されていないと言わざるを得ない文法項目のうちの一つである。本発表では、(一)“是……的”構文には、現在どのような説明が与えられているか、どのような練習問題が用意されているか、(二)学習者による“是……的”構文の使用状況は、(一)に対してどのような問題をつきつけるか等を指摘し、ユーザー視点の中国語教育文法がどのような情報を提供すべきかを論じる。

张恒悦(大阪大学)
「语法点引入时的话题与场景选择――以教材中差比句的处理为例」

本研究的目的在于通过对当下使用的汉语教材中差比句引入状况的调查和分析,思考为培养学习者面对面交流能力需要在以教材编写为代表的教学上做出哪些改进。本研究的主要框架是:首先,对当下使用的汉语教材进行抽样调查,从中归纳出差比句的引入在话题、例句以及场景设计上体现出来的编写倾向;然后,挖掘和考察隐藏在编写倾向背后的编写理念,并从学习者的视角加以审视和检验;最后,对学习者需求和愿望进行调查,并以此为基础对初级汉语教材差比句的引入方式提出改进建议。

 
岩田一成(聖心女子大学)
「データから見る日本語比較表現の実態」

日本語教育では比較表現が4種提示されている(旧日本語能力試験3級項目)。「―ハ―ヨリ」「―ヨリ―ホウ」「問:―ト―トドチラ? 答:―ホウ」「―ホド―ナイ」である。この中で広く教科書が採用している「ヨリ」「ホウ」について日本語母語話者の会話コーパスで出現頻度を調べてみたところ、他の文法項目よりも少ないことがわかった。また学習者の発話コーパスを分析すると、OPIの初級、中級レベルの学習者ではあまりうまく使えていないことが明らかになった。最後に本発表では、比較表現をどのような形式で教えたらいいかを提案する。

西香織(明治学院大学)
「データから見る中国語比較表現の実態」

中国語教育では初級の早い段階で比較表現が導入され、その比較表現は「“比”字句」とその否定形であることが多い。発表者はコミュニケーション上のニーズや各文型の使用頻度を考慮し、これらの文型の初級での導入を見送る試案を提示したが、「この表現が言えないと学習者が困る」「この表現はよく使用されているはずだ」という声も多く聞かれた。そこで、主に話し言葉を中心としたコーパスを用い、比較表現(主に“比”字句)の種類や出現頻度を確認したところ、「A比B+形容词」という最もシンプルな形が多用されており、形容詞も“好”“多”“大”等に集中していることが明らかになった。これらの結果をもとに、改めて初級に必要な比較表現について提案する。

清原文代(大阪府立大学)
「『比べて選ぶ』ための教案――“货比三家“ネットショッピングサイトを利用して学ぶ――」

(一)この教案の目的
・生活に欠かせない行為である買い物について最低限必要な表現を学ぶ。
・中国のネットショッピングサイトを見ることを通じて中国の消費生活の一端を知る。
(二)この教案の目標
(1)品物の値段を言える。
(2)品物の値段について「安い」「高い」などの簡単なコメントができる。
(3)品物の善し悪しについてごく簡単なコメントできる。
(4)考慮の結果、自分が選択した品物を指定できる。
(三)この教案に必要な物
・スマートフォン等ネットショッピングサイトを見られる機器
(四)この教案を学ぶ前に最低限必要な知識
・3桁までの数字が言えること。

中田聡美(大阪大学)
「中国語初級教科書における語気助詞の扱いを再考する――語気助詞“吧”を例に――」

語気助詞は初級段階で必ず学習する文法項目の一つである。本発表ではその中の語気助詞“吧”を取り上げ、中国語初級教科書においてはどのように説明されているのかを概観し、その説明によって生じる問題を指摘する。その上で、ユーザー視点の中国語教育文法の観点から、実際にどのようにを教えるのがよいかを示し、中国語初級教科書における語気助詞の扱いを再考する。

古川裕(大阪大学)
「多機能語の感性的教授法について――“把”のコアイメージを例として――」

専攻中国語クラスでは、さまざまな“把”に触れる機会がある。量詞(数量詞、動量詞)、動詞、前置詞、名詞など、多機能語の“把”である。まさに多機能語であるゆえに、学習者は個々バラバラの知識として理解しがちである。そこで、“把”を一例として、その核となるイメージを感性的に捉え、多機能語をシンプルに学習する方法を提案する。そして、複雑なものをシンプルに学ぶ方法を一般化し、二外中国語クラスでも適用できるような感性的教授法の前途をさぐりたい。