2022年度第3回研究会 実施要項

1、開催日
 2023年2月26日(日)10:40〜17:15
・オンライン(zoom)で実施。参加費無料。
・2月23日(木)22:59までに下記「こくちーず」にお申し込みください。
https://www.kokuchpro.com/event/b10117483d7122f29a7acc88cf5ba694/

・Zoomアドレスは2月24日前後に申し込み時のメールアドレスに送信予定です。

2、当日の流れ
10:40〜10:45  諸注意
10:45〜11:25  発表者1(質疑応答含む)(発表30分+質疑応答10分=1人40分)
11:25〜11:30  休憩
11:30〜12:10  発表者2(質疑応答含む)(発表30分+質疑応答10分=1人40分)
12:10〜13:00  休憩
13:00〜14:30  ワークショップ1(参加者との相互交流ふくむ)
14:30〜14:40  休憩
14:40〜17:10  ワークショップ2(参加者との相互交流ふくむ)
17:10〜17:15  諸連絡

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発表者1
中国語初修クラスにおけるイントネーションを重視した発音指導の試み
羅 華(立命館アジア太平洋大学)

                                                                                            
初修クラスの発音指導は一般的にピンイン全般に均等な注意を払う。しかし、一つのピンインなら正確に発音できるが、文を話すと抑揚がないイントネーションで発音し、意味が伝わらない学生が少なくない。中国語(普通話)の巻き舌音及び後鼻音は南方出身の中国人にとっても習得しにくいが、外国人みたいな話し方だと言われない。その理由は、南方出身の中国人は巻き舌音及び後鼻音ができなくとも中国語らしいイントネーションで話しているからと言えよう。中国語らしいイントネーションを成り立たせるには、声調及び文における声調の変化が決め手だと思われる。よって初修者の発音指導はピンイン全般を一通り学習し終わった後、指導の重点をイントネーションに移す試みをする価値があると思われる。本実践は中国語教育学会第19回全国大会において笈川幸治先生の基調講演に紹介された「笈川楽譜」の考え方を援用し、初修クラスの発音指導を改善する試みである。

発表者2
中国語運用力とファシリテーション力の育成を目指す授業デザイン
―会話・リスニング科目の協働学習と授業スケジュール管理の実践―
王 秀梅(同志社女子大学)

 ファシリテーションとは「参加者が集団で問題を解決するため、認識の一致を確認したり、相互理解を深めたりするためのサポートをして、成果を生み出す」手法のことであるが、そのプロセスに見る、参加者の発言を促し、重要なポイントを引き出しつつ、議論を広げて、合意形成をサポートするといった一連の行動は、授業活動に当てはまるものも多い。発表者は、授業計画の枠組みに、学生たちの自主学習プランを組み入れさせ、更に学生自身に授業時間の配分・進行をさせるように授業運営しており、継続性のあるやりとりの中で、学生たちに中国語の時間詞や提案・確認表現を使って授業を進行させることによって、中国語運用力と共に、ファシリテーション力の育成にも繋がることを目指している。本発表では、2年次学生を対象とする第二外国語の担当科目での授業実践を中心に報告するが、今後、更に教材や学習段階に合わせた授業デザインを考えていきたい。

ワークショップ1
日本語母語話者の中国語中間言語コーパスの開発
張恒悦(大阪大学)、徐勤(大阪大学・院)

日本語母語話者による中国語中間言語のデータは、誤用研究、第二言語習得研究、日中対照言語研究、外国語教授法開発など多くの研究分野で活用されているが、これまでそのデータを提供するコーパスの構築は十分になされていない。
 本ワークショップでは、日本語母語話者が産出した中国語作文をデータベース化し、情報処理技術により、多様な利用者ニーズに応じた検索機能をもたせた上で、オンライン公開を目的とする中国語中間言語コーパスの設計及び開発についての報告を行う。
 本ワークショップは、以下の3セクションからなる。
(1) 中国語中間言語コーパスの開発目的及び設計コンセプト(張恒悦)
(2) 中国語中間言語コーパスにおける検索機能(徐勤)
(3) 質疑応答及び意見交換

ワークショップ2
レアリアで授業を作るために
―中国語教育の場合―
  中西千香(立命館大学)、明木茂夫(中京大学)、石崎博志(関西大学)、塩山正純(愛知大学)

4名の発表者は、通常の中国語の授業に加えて、レアリアを分析し、教材として取り入れるために何ができるかを課題に取り組んできた。語学の授業では、学習者のよりよい効果を生み出すために、授業の中で、いろいろな「しかけ」を作ることを考えなければならない。その一つとして、レアリアを活用できると考える。
 本発表では、発表者の分析例や授業実践例を通して、そこで気づいた中国語レアリアの難点についても触れながら、レアリアを授業に導入する際のポイント、メリットについて考えていく。 

レアリアを使って、どう教材を作るか  中西千香(立命館大学)
 教授者側が気を付けるべき確認事項について論じる。つまり授業にレアリアを取り入れる時、①既習事項、②何を学ぶためにどんなレアリアを使うのか、②何を学んだ後にレアリアを導入するのか、④レアリアに付属して、どんな副教材を作成するか。④そのレアリアを使って、どんなアクティビティを行うかといった諸点である。今回は、大学院の授業で実際にアクティビティを作ることを課題にした。その中で見えてきた、アクティビティ作成のポイント、難しさについて報告したい。

日本漫画の中国語翻訳のレアリアとしての利用価値  明木茂夫(中京大学)
日本漫画の中国語訳本の事例を紹介する。漫画には外国語への翻訳が困難な表現が多く、それが実際にどのように訳されているかを詳細に検討することは語学的にも文化的にも意義があり、翻訳論の資料として利用価値が高い。特に今回採り上げるのは訳注の多い翻訳作品、および誤訳の多い翻訳作品である。ある訳注を付した翻訳者の意図や、翻訳者の犯した誤訳の原因を詳細に検討することを通して、注釈というもの性質や、翻訳というものの社会的意義を学生に体感させることができる。

食品表示にまつわるレアリアー標準規格とパッケージ  石崎博志(関西大学)
 食品にまつわるレアリアの事例を紹介する。使用したレアリアは食品パッケージの記載内容を規定する中国の標準規格の文書と、実際のパッケージで、そこから中国語における文語表現と口語表現の差異を教授する素材としている。そして日本と中国では食品表示上の差異があり、教学上の留意点として食品表示を正確に読み取るためには材料や添加物の単位や化学成分への理解が不可欠であるとした。

ニュース記事レアリアを使う学習 ―“光盘行动”を例に―  塩山正純(愛知大学)
 スピーカーの塩山は、ニュース記事レアリアを使う学習で、“光盘行动”を例に発表する。ニュースを使った授業では、トピックの背景への理解と同時に、何に対してどんな表現を使うかという「ふさわしさ」を実感することが可能で、既習の口語とニュースの書面語をリンクさせるプロセスともなる。本発表では、“光盘行动”をトピックとするニュース記事から、学習で扱うべきトピックの文化背景や、トピックとリンクする定型表現、多字句の対句、比喩的表現、ポライトネス表現などの特徴を紹介し、進化が目覚ましすぎるAIの機械翻訳と競合しないところで、学習者がいかに理解を深めるきっかけを得られるように促せるか、報告者自身の実践から学習スタイルの一例を紹介したい。

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